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田中、農業はじめるってよ

山形県大江町で2018年に独立を目指しています。

モーレツに話したお盆休み

  台風9号は北海道を抜けて、大江町は晴れて少し風が吹いている。夏はまだ続きそう。農家にお盆休みはない(雑仕事や草刈などはある)が、11日から16日まで帰省した。とにかく連日人に会って話した。東京に帰りたいではなく、東京の人とモーレツに話したかったんだと大江町に戻って気づいた。農家のこと、農業のこと、大江町のことはもちろん、それだけでなく近況などをとりとめなく話したかった。今回会えなかった人は、次に帰省、または帰京した時にゆっくりと話したい。一種のホームシックだったのだろう。時間を作って会ってくださった方々、ありがとうございました。

 こっちに持ってきたCDや本をようやく手に取る余裕が出てきて、東京にいる時よりじっくりと落ち着いて楽しんでいる。フォーラム山形で「シン・ゴジラ」「ひそひそ星」「カルテル・ランド」を観られたのも心の糧になった。批評や感想をいちいち書くつもりはないが、近況報告を兼ねてちょくちょくアップしていこうと思う。

 

桃の収穫がはじまりました

 5日から桃の収穫が始まった。9月末まで品種リレーして出荷していく。後半戦のスタートだ。作業は午前5時から7時(収穫して小屋に運ぶ)。午前8時から10時過ぎまで選果と箱詰めや箱作り。夕方5時ごろから1時間ほど明日の準備をする。日中は休み。全国で35度を超える猛暑が連日続いているが、大江町は内陸盆地気候なので日中はとにかく暑い。朝と夜は冷えるので、東京のような熱帯夜はないから助かる。炎天下の作業は死を意味するし、効率があがらない。それも約2カ月続くから、日中も作業していたら体が持つわけがない。

 桃は指先に力をいれてもぐと握った跡がくっきりつくので、手を広げて指の第2関節あたりと手の平の上の辺りに力を入れる。ねじったり左右に引っ張るのでなく、地面に向かって垂直にそっと引っ張る。さくらんぼより数は少ないが、玉は大きいし繊細な果物のような気がする。この時期、朝は涼しくて集中力があるので一番はかどる。朝食を食べてからの午前8時以降は一気に気温が上昇するので、小屋での作業でないとキツイ。さくらんぼのように短期集中でなく、日々、少しずつ農作業をしていくリズムは自分に合っている。

 桃は桃としか認識なかったのに、栽培という点ではとても面白い。シルバーを敷くまで成っている気配を消す(日光をできるだけ避ける)ようにするとか、樹の上部から熟すので色見や形が悪くても味では下部よりおいしいとか。当たり前だけど桃が好物という人は多い。

収穫直前のあかつきという桃。

このあと作業小屋に運び選果、箱詰め。

売れる桃とおいしい桃の違い

 師匠は7月中旬から下旬になると、からっきしやる気がなくなるという。とはいいつつも、仕事はあるわけで朝2時間、夕方2時間とのんびりと過ごしている。昨夕、まどかのシルバーシートを張ってあとは収穫を待つだけとなった。桃の栽培で難しいのは、いかに日光をあてずに固めの果実を作ることだと教えてくれた。シルバーを張るまでは、葉の色と果実がほぼ同化して、遠目ではなっているのかわからないように作らなければいけない。シルバーの反射光でお尻が赤くなり、初めて桃がなっていることを目で確認できるのがベスト。そして、軸(頭)には日光をあてずに葉っぱで覆うのポイント。軸に日が当たると一気に柔らかくなり、売り物にはならなくなるから。

 じゃあ、おいしい桃はどうか。日を当てて色づきやわらかくなったのを、もぎたてで食うのが一番。これにはかなわないが、箱詰めしてお客さんの手許に届く頃には熟れすぎてぐちゃぐちゃになる。もちろん、その前に市場やJAからクレームが入るが。

「桃を作っているのはお金をとるため。売れる桃を作らなきゃ」

 おいしい桃だから売れるのではなく、売れる規格に合わせた(大きさ、色、やわらかさなど)桃を作ること。今更ながら金づちで頭を殴られた衝撃を受けた。専業農家で食うことの基本的な考え方を目の当たりにした。規格や流通に問題ないかというは話は別として。

山形でも桃は作っています

 師匠の畑で作付け面積が一番なのは桃。東京で37年間過ごしてきた私にとっては、岡山、山梨しか思いつかない。それと福島が一大産地なのも大江町に移住して初めて知った。結局は、産地化とブランド化に成功した地域の農作物が都市圏で流通することを改めて感じた。山形は品薄となり高値で取引される9月に照準を合わせて栽培している。

 桃はあまり好きじゃないせいか、桃といえば桃しか思いつかない。が、品種は驚くほどある。果肉が固めの“おどろき”、“まどか”、“あかつき”、“川中島”、“伊達”、“さくら”、“阿武隈”など。師匠のおすすめは、まどかとさくら。名前を聞いただけで色香が漂う、いいネーミングだと思う。

 作付け面積は広いが品種ごとに植えられているため、シルバーシート敷きも収穫に合わせて移していくだけ。収穫も同じく、さくらんぼのように短期集中でなく1品種、数日で終わり。8月初旬から10月初頭まで収穫リレーが続いていく。

作付け計画の考え方

 大江町で研修を始めて3ヵ月半が経った。その間、1日も欠かさず考えていたことがある。栽培する品目の選定とどれを主力と置くかだ。師匠はこの辺りの話をよくするし、過去から現在に至るまでの変遷理由をわかりやすく教えてくれるので、それは作付け計画の軸になっている。

 “就農”という言葉が世間では馴染みが薄いし、補助金がかなり出るからお手軽のイメージを持たれてると実感している。はっきり言うと、独立就農は“起業”。流行にのれば“スタートアップ”だ。果樹、米、野菜、花卉など品目を問わず、まともに農業機械や作業小屋、ハウスなどを揃えようと思ったら軽く1000万円は超える莫大な金がかかる。家庭菜園の延長じゃなくて、農作物を作り、販路を開拓してはじめて売上が立つ。人間の生活の根幹である食、地域社会との密接な関わりなど、農業でなく農の部分の役割が脚光を浴びているが、それは農業が成り立ってはじめてその価値が認められると私は思っている。

 話が脱線したので、作付け計画に戻す。師匠の考え方はいたってシンプル。

「毎月の作業量を一定化して、収入を分散化する」

 30年前、師匠は早生から晩生までのりんごを3町歩少し作っていた。収穫は10月から11月後半までずらせるが、剪定、摘果、徒長枝刈、袋かけなどの作業はすべて重なる。1反歩15本、1町で150本。3町で450本。とてもじゃないが、1人でこなせない。だが、30代前半まで若さで乗り切っていた。収穫後の箱詰めは、6000から8000箱。12月の雪深いなか、作業小屋に泊まって箱に詰めていたという。

 35の時に10年後の自分を想像して、この作付けでは体がもたないと思い、さくらんぼ、もも、りんご、ラフランスの作付けに変えていった。農家が苦しいのは、年1回の収入に頼っているから。米、りんご、ぶどうなど単一品目大量生産の国の政策にまんまと乗っかり、価格が低迷してからはじり貧になる一方だ。春、夏、秋に収入を得るようにして、尚かつ作業量を一定化すれば農家を続けられるのではないか。そして冬は剪定しながらのんびりと過ごす。さくらんぼの時期は短期集中なので作業量は突出するが、あとは朝8時から夕方5時(お昼休憩1時間)、日曜休みで農園を回している。

 どんな作物でも長所と短所がある。例えばりんごとすもも。りんごは作業回数が多くて収穫まで時間がかかるが、毎月の作業量が一定している。その作業も短期でやる必要がなく、時間の余裕を持てるから他の作物と組み合わせやすい。それと収穫後も貯蔵がきくので、高く売れないが冬の稼ぎの足しになる。剪定は3年後、5年後、8年後を想像して枝を残して、習得には最低でも5年かかるという。

 すももは、作業回数が少ない分、収穫時に忙殺される。大石早生は雑にもげるが、他はプルームを残したまま箱詰めしなければならない。収穫には手間暇がかかり神経を使う。

 作物それぞれの年間栽培スケジュールを把握したうえで、師匠の考え方をもとに組み合わせを練らないと数年後、1人ではどうやっても管理しきれないことになる。今のところ、果樹複合栽培を念頭に置いているが、花卉(啓翁桜)、野菜(にんにく)などを組み合わせた案も作っている。

 年末まであがいて、あがいて苦しむことになるだろう。

すもも、はじめてたべたよ。

  すももの新品種を作りたくて山形県大江町に移住してきたのに、実はすももを食べたことがなかった。本当に。駄菓子屋の赤い着色液につかったすもももどきはあるが、果物としてのすももは収穫した時にはじめて口にした。夏の蒸し暑さで疲れた体で食べたのもあるが、甘くて最後に酸味があってうまい。もっと酸っぱいかと思っていたが、ほどよい。大石早生(おおいしわせ)は、青いすももなので、お尻が少しでも赤ければ食べごろになる。なんだか実が固くてただ酸っぱいだけと思うが、実際はおいしい。店頭に並ぶ頃には、熟して黄色くなっているはずだ。早い時には1日で真っ赤になるという。すももに限らず青い品種は、赤い品種より値段が安くなる。青りんごと赤りんご。人は、赤いと無条件においしいと脳が感じるかららしい。この話は、先日合ったJAのベテラン職員から聞いた。どんなにおいしくても青い果物は、高く売れない。

 これは熟れすぎて出荷できない完熟すもも。収穫してすぐ食べると柔らかい果肉と滴る果汁で絶品。特に朝がうまい。収穫期間の後半は同じ赤いすももでも、自分の好みがわかってきて(ぶよぶよになっている寸前。果肉の硬さが少しある)、手の感触でヒットしたものは口にしていた。どうせ、かごには入れずに投げる(捨てる)のだから。このすももの使い道は、自家製のジャムやジュース。あるいは青果店から注文が入れば引き取ってくれる。腐りかけがうまいというが、それは商品として扱わないからであって、完熟○○といってもその寸前のものがお客さんの手許に届いているのが現状。なんでも、畑で採ってすぐ食べるのがうまい。農家の特権である。

すもも(大石早生)の収穫が終わる

 7月4日から13日まで、すももの大石早生(おおいしわせ)の収穫だった。大量になっているから、とにかくもぐ。そして、農協出荷のパック詰めが深夜まで続くと、事前に何度も聞いていたから心構えはできていた。百聞は一見にしかず。市場が休みのため午後休み、雨のため1日休みもあったが、その収穫量が想像をはるかに超えていた。下の写真は実が成りすぎて枝が地面に垂れ下がっている。なかには、重みに耐えきれずに根元が折れてしまったのも散見された。マイカ線で誘引しているにも関わらず、ここまで実が成るのには驚いた。収穫してしらばらく経てば枝は元に戻るそうだ。

 私は収穫担当で、朝5時から7時、8時から12時、13時30分から17時30分までひたすら収穫した。もいでもいでもぎまくる。田んぼに使う大型トラクターの後ろに荷台をつけて、それにフォークリフト用のパレットを敷きその上にコンテナを置く。下の写真を見るとわかるようにとんでもないすももの数。さくらんぼと違い、軸は残さず、傷つけない程度なら雑にとって構わない。雨でも収穫できる。大石早生は、実が青くてお尻が赤い状態で出荷するのがベスト。赤い実は熟成が進んでいるので、とってすぐ食べるにはうまい。が、パック詰めして店頭に並ぶ頃にはぐちゃぐちゃになるから出荷できない。

 収穫がはじまった数日はぬきもぎ(実を選別して収穫)していたが、中盤から一気に色づきはじめたので、がらもぎ(すべて収穫)に切り替えて、時間単位の収穫量をいかに多くするかに注力した。収穫したあとは選果(機械でサイズ別にわける)して、箱に詰める。さくらんぼのように化粧箱、フードパック、チルド、贈答など種類は多くないし、原料(果実)の扱いは楽だが量が半端ない。独立した先輩の「眠れねぇぞ」の言葉がリフレインした。畑の規模にもよるが、これ1人でこなすのはきつい。それでも大石早生は一番楽で、これ以降の品種は実についたプルーム(白い粉)をきれいに残して出荷しなければならないから、さくらんぼのように神経を使って収穫して箱詰めする必要がある。