田中、農業はじめるってよ

山形県大江町で2018年に独立を目指しています。

作付け計画の考え方

 大江町で研修を始めて3ヵ月半が経った。その間、1日も欠かさず考えていたことがある。栽培する品目の選定とどれを主力と置くかだ。師匠はこの辺りの話をよくするし、過去から現在に至るまでの変遷理由をわかりやすく教えてくれるので、それは作付け計画の軸になっている。

 “就農”という言葉が世間では馴染みが薄いし、補助金がかなり出るからお手軽のイメージを持たれてると実感している。はっきり言うと、独立就農は“起業”。流行にのれば“スタートアップ”だ。果樹、米、野菜、花卉など品目を問わず、まともに農業機械や作業小屋、ハウスなどを揃えようと思ったら軽く1000万円は超える莫大な金がかかる。家庭菜園の延長じゃなくて、農作物を作り、販路を開拓してはじめて売上が立つ。人間の生活の根幹である食、地域社会との密接な関わりなど、農業でなく農の部分の役割が脚光を浴びているが、それは農業が成り立ってはじめてその価値が認められると私は思っている。

 話が脱線したので、作付け計画に戻す。師匠の考え方はいたってシンプル。

「毎月の作業量を一定化して、収入を分散化する」

 30年前、師匠は早生から晩生までのりんごを3町歩少し作っていた。収穫は10月から11月後半までずらせるが、剪定、摘果、徒長枝刈、袋かけなどの作業はすべて重なる。1反歩15本、1町で150本。3町で450本。とてもじゃないが、1人でこなせない。だが、30代前半まで若さで乗り切っていた。収穫後の箱詰めは、6000から8000箱。12月の雪深いなか、作業小屋に泊まって箱に詰めていたという。

 35の時に10年後の自分を想像して、この作付けでは体がもたないと思い、さくらんぼ、もも、りんご、ラフランスの作付けに変えていった。農家が苦しいのは、年1回の収入に頼っているから。米、りんご、ぶどうなど単一品目大量生産の国の政策にまんまと乗っかり、価格が低迷してからはじり貧になる一方だ。春、夏、秋に収入を得るようにして、尚かつ作業量を一定化すれば農家を続けられるのではないか。そして冬は剪定しながらのんびりと過ごす。さくらんぼの時期は短期集中なので作業量は突出するが、あとは朝8時から夕方5時(お昼休憩1時間)、日曜休みで農園を回している。

 どんな作物でも長所と短所がある。例えばりんごとすもも。りんごは作業回数が多くて収穫まで時間がかかるが、毎月の作業量が一定している。その作業も短期でやる必要がなく、時間の余裕を持てるから他の作物と組み合わせやすい。それと収穫後も貯蔵がきくので、高く売れないが冬の稼ぎの足しになる。剪定は3年後、5年後、8年後を想像して枝を残して、習得には最低でも5年かかるという。

 すももは、作業回数が少ない分、収穫時に忙殺される。大石早生は雑にもげるが、他はプルームを残したまま箱詰めしなければならない。収穫には手間暇がかかり神経を使う。

 作物それぞれの年間栽培スケジュールを把握したうえで、師匠の考え方をもとに組み合わせを練らないと数年後、1人ではどうやっても管理しきれないことになる。今のところ、果樹複合栽培を念頭に置いているが、花卉(啓翁桜)、野菜(にんにく)などを組み合わせた案も作っている。

 年末まであがいて、あがいて苦しむことになるだろう。