田中、農業はじめるってよ

山形県大江町で2018年に独立を目指しています。

桃の花芽を取る、取る、取る

 畑での作業は、2日前から桃の花芽を取る作業を1日中、師匠Tさんの奥さんと2人でやっている。桃に限らず、果樹全般に共通にする。これを怠るとよい果実を実らせることができないし、木を殺しかねない。果樹は野菜より派手そうに見えるが、実際は地味な作業を積み重ねていくだけ。野菜でも同じ。

 花芽を取る作業は、芽かきと摘蕾(てきらい)に分けられる。苗木(実を成らせず成長させる木)の花芽を取る時は芽かき、成木(実を成らせる木)の花芽を取る時は摘蕾という。どちらも花芽を取ることに変わりないが、花芽の残し方が異なる。苗木の場合は、葉芽(葉っぱ)は残してあとはすべて取る。情けをかけるとよい木にならない可能性があるからだ。桃色の花が咲き始めてからの芽かきは辛いというのはわかる気がする。いまでも一分咲きの蕾がちらほらあり見とれてしまうから。

 摘蕾は、実を成らせる花芽と葉芽は残す。葉芽は光合成で栄養を取り込むので摘んではならない。この花芽の残し方は、ちゃんと理屈がある。短い枝は先端だけ残してあとはすべて取る。実が重くなると1つが限界。長い枝は、先端と元はすべて取る。次に残った花芽のうち、葉芽の下にある花芽は残す。雨に弱いので葉を傘代わりにするというのがミソ。全てでなく中指の間隔は空ける(実がぶつからないため)。太い枝は、短い枝と同じ。成らしても実に軸がないため枝に食い込み、自然落下してしまうから。そうすると無数の花芽がついているのに、残すのは僅かとなる。この説明を読んでも実際に作業をして五感で覚えないと、正確にてきぱきとできない。あらゆる農作業は、体で覚えたことを文章化(マニュアル化)しないと身につかない。

 なぜ、この作業をするのか。苗木は「小学生に子どもを産ませるようなもの」で、大きな負担をかけて成長を阻害するからだ。だいたい4年から5年で初めて実を成らせる。成木は、数を絞りよい実を成らせるため。この工程はすべて手作業で、植えてある木すべてに行う。気が遠くなる話だが、銭を稼ぐにはコツコツとやるしかない。桃は、この芽かき・摘蕾の作業が山場で、これを終えれば収穫まで2人で作業ができるという。

 

枝に蕾がたくさんついている。これを1本、1本見ながら取っていく。高いところはもちろん脚立を使う。

 

短い枝なので先端の花芽(葉芽の下)だけ残す。

 

成木だとこの大きさに。本数はわからないが、広さは80a。