田中、農業はじめるってよ

山形県大江町で2018年に独立を目指しています。

米の種まき(ハウス)

 先週の19日(火)、種籾をはじめて見た。倉庫の天井から吊り下げれているのがそれで、乾燥させているとのこと。そんなことから、21日(木)の種まきに参加させてもらった。米の種類は、食用米・はえぬき、コシヒカリ酒米出羽燦々、美山錦。酒米があるのに少し興奮してしまった。お酒が好きな手前、「ワイン用ブドウは作らないの」とよく聞かれるが、作るなら酒米と決めている。醸造用ブドウは、湿気や雨を極端に嫌うため、栽培が非常に難しいから。一方、稲作は山形県(日本)の風土に適してるのがある。酒米の品質はもちろん、杜氏の技術によって大きく味が変化する日本酒のほうがおもしろいと感じるからだ。

 種まきの作業は人数が多いほどはかどる。大まかな流れは、パレットに新聞紙を敷き、それを専用機械のラインに載せる。人力で土を上から入れると、その土がパレットに落ちる。次に水がまかれ、種が落ちて、最後に土が覆いかぶさる。土入れ→播種→灌水→覆土の作業手順が、ほぼ自動で行われる。この専用機械がなく、ほぼ手作業でやる農家もある。その様子を聞くと、無理!と思ってしまう。自分は、パレットに新聞紙を30分ほど敷いてから、一番力がいるハウス内に並べる作業に移った。

 パレットは木枠で組まれた台座にある程度積んだら、軽トラの荷台に移して、ハウスに移動。あとは、人力で並べていく。このハウスは、原木しいたけ・なめこの栽培に使っているが、春になると米の育苗空間に変わる。グリーンプロシード(育苗を促進させるシート)を敷き、まずは大量の水をまく。地面を十分に湿らせることで、発芽するまでに水やりが必要ないそうだ。あとは、隙間なくできるだけまっすぐに並べていくだけ。パレットは軽そうに見えるが、1回で2枚持つのが限界。もみ殻燻炭を混ぜているからいいが、100%土の場合はもっと重いらしい。1週間程度で発芽するが、成長度合いにバラつきが出るから、パレットの位置を入れ替えて、芽の長さを揃える。通常、外側の気温が低く、中側が高い。この作業は参加しないが、想像するだけでしんどい。全てのパレットをもう1回持ち上げて移動させるのだから。米はこの育苗で品質が決まってしまうので、非常に神経を使うという。

 今回は施設育苗だが、苗代は、直接、水田で行う。機械も農薬もない時代は、当たり前のようにこの作業をしていたと思うと頭が下がる。苗代は植えるまでがハウスの10倍ほどの労力がいる一方、水が引いてあるので管理は楽だという。好天が続き、水が少なくなってもすぐに足すことができるからだ。

 パレットの数は900枚を超えた。午前8時半から作業を始めて、1時間のお昼休憩をはさみ、午後4時には終了。シルバーマルチ(パオパオを下に重ねている)をパレットにかける理由は、一定温度に保つためで、ハウス内の温度が40度を超えても、下は30度前後に保たれる。欠点は、曇天が続き気温が高くならなかったら、30度前後に達せず、発芽状況が悪くなる可能性がある。こればっかりは、自然相手なので仕方ない。

 

 

 

 

移住して早1か月

 慣れない農作業をほぼ毎日していると、疲れは知らず知らずのうちに溜まり、ブログの更新が滞った。米の種植え、さくらんぼ雨除けハウスの建設、人工授粉、高所作業台の運転、山菜採りなど、ネタはてんこ盛りなのだが、ついつい布団に横になってしまった。気づいたら、こっちに来て早くも1か月が過ぎている。時が経つのは早い。不器用で作業を覚えるのに人一倍かかっているが、できるまでひたすら繰り返して練習すればいいので、それほど気にしていない。機械操作、ひも結び、工具の使い方とか。農業は野菜や果樹に限らず、機械いじりや土木作業(DIY)に明るい人の方が向いていることは確か。それに追いつくには、自分の中で工程を細分化して言葉(マニュアル作り)するしかない。これは、久松農園の久松達央さんが「小さくて強い農業をつくる」に書いていた。体が慣れるまであと1カ月はかかると思う。

おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。

 

エンストゼロ運動実施中

 電車と徒歩の生活から車が足代わりなって早1か月。軽自動車税の通知が届いたので封を切ると、古い車種になると税金が高くなる制度に変更した案 内と12900円の納付用紙が入っていた。ガソリンは原油が底値を打ったからか上昇基調にあるし、車検は2年に1度、任意保険もかかるので金喰うなと思っ ている。

 車の運転は下手くそ。なのに周りに合わせて、びゅんびゅん飛ばしているから少し抑えよう。止まれで停止する車はほぼ無し、 法定速度を守るどころか20キロオーバーは当たり前。夜でも同じで、ちんたら走っていると後ろからハイビームを点滅させて煽られる。しかし、初めて運転する土地がこの大江町なので救われている。まず、複雑な交差点がない。車が少ない。自転車やバイクはほとんど走っていない。駐車場も大きいので入りやすい。 が、バックして駐車すると曲がったまま枠内に収めることが多く、決まったと思って降りたらガックシというのを繰り返している。そして、エンストも。

  エンストは、駐車や徐行の時に半クラで1速、2速で起こる。情けない。エンストゼロで1日を終えるのは運転しなかった日だけ。つまり、運転した日は 100%やっている。エンジン回転数を見ながらアクセルとクラッチの加減を微調整すれば起きないと思うが、なぜか止まってしまう。他にも色々やらかしてい て、ヒヤリハットの連続。道に迷い山道をUターンした時にバンパーをこすって傷つけた程度で済んでいるのは、奇跡に近い。

 助手席に他人を乗せて安心させるには、まだまだ時間がかかりそう。研修生同期のSごめんよ。

灯油ファンヒーターが手放せない

 日中の寒暖の差が年中通して大きいのが、この大江町の特徴だ。農作物は、日中に光合成をして、夜間に栄養分を全体に行き渡せる活動をしている。夜 間が寒ければ、人間と同じで活動が鈍り、栄養分はあまり消費することなく蓄えることができる。果樹は糖度が増しておいしい実がなるし、野菜も引き締まった 出来あがりになる。

 これらはここへ来る前に調べて学習したこと。農作業を通して感じるの は、作業着は厚着と薄着の両方が必要。帽子はニット帽をかぶっている。暑ければとればいいだけで、夕方3時以降は被らないと耳が痛くなり作業に差しさわり がでる。お洒落もあるが、日中の気温と作業内容に合わせて着替えないと効率が落ちてしまう。ここ1週間の気象を調べてみると、寒暖差が10度以上の日 が5日ある。数字と体感温度とさほど変わらない。慣れない農作業を毎日しているのもあるが、この寒暖差もダメージを与えていると思う。天 然温泉で温まり、疲れをとらないとやってられませんよ。

日付最高気温(℃)最低気温(℃)寒暖差(℃)
2016/4/5 16.5 -1.1 17.6
2016/4/6 15.7 0.0 15.7
2016/4/7 8.5 1.7 6.8
2016/4/8 13.2 4.3 8.9
2016/4/9 19.2 1.8 17.4
2016/4/10 19.1 1.7 17.4
2016/4/11 7.5 1.0 6.5
2016/4/12 13.2 -1.8 15.0

 *1

 東京と比べるとまだまだ寒い。5月中旬までこの冷えは続くという。だから、部屋にいるときは、昼間でない限り灯油ファンヒーターをつけている。このホースのようなものはダクト。ファンヒーターの熱風をこたつに送り込 み温める優れもの。岩手県出身の友人の一さんに教えてもらった。こっちに来て、ホームセンターですぐに買い、重宝している。電気代の節約にもなるの はもちろん、電気より温まるのがよい。電気ヒーターはいらないし、使う予定もなし。

  2日前。風が強くなってきたので先週から続いている桃の芽かき、摘蕾の作業を午前10時半で切り上げた。山からふもとに降りてきたら、いきなり雪が降り始 めて、すぐ吹雪に。視界ゼロメートルの世界には程遠いが、天気の移り変わりに驚いてしまった。寮に戻ったら、青空になり日がさすのだから。大江町に住み始 めて、3週間が過ぎたが、山の天気のように目まぐるしく変わったのは初めてだった。寒暖差を嫌というほど感じた一日だった。

 

 

*1:気象庁 左沢観測値より作成

土木作業員見習い

 先月28日(月)、先輩Yさんに誘われて土木作業の手伝いをしてきた。

「あぜ道をコンクリート舗装する地域活動のお手伝いだよ」と聞かされて、朝7時半に現地到着。地元の建設会社2名と地域のお年寄りが集まり、すぐに作業を開始した。重機で砂利と土をならしたあと、両脇にコンクリートが流出しないように木枠を作った。みなさん慣れた手つきで、杭を打ち込み釘で固定していく。体力はこちらがあると思うが、向こうは小さい頃から経験を積んできているので体や道具の使い方が慣れていて手際がよい。枠をすべて作り終えて休んでいると、轟音を立てて生コンを積んだトラックミキサが走ってきた。東京では街中を走っていても何とも思わなかったが、まさか利用することになるとは。生コンをトラックに移し替えて、荷台から生コンを枠内の道に流し込む。その後は、人力で平らにしていく。ヘラを初めて使ったが、うまくいかず跡が残ったりでこぼになったり。左官仕事の凄さがよくわかった。

 お昼休憩を1時間はさみ、午後3時で終了。もっとかかるかと思っていたが、天気もよく人が集まったので早く進んだ。終わった後、小さな土手に座ったらウトウトしてしまった。コンクリートでなく土で固めた方が環境に優しいのではと一瞬思った。Yさんにそれを聞いてみると、「車が頻繁に乗り入れるのでコンクリートじゃないとすぐに凹凸ができて、横転やタイヤがはまる危険が高まってしまう」と教えてくれた。こっちに来て毎日車に乗るようになって、その通りだと納得した。全てはバランスの取り方。

 スコップの柄を使って杭を固定しながら木槌で打ち込んだり、釘の打ち方とか観察しているとプロは違うなと感心してしまった。地域へ溶け込むことの大切さは、新規就農や移住に関して周りから口酸っぱく言われるが、大江町に来るまではイメージがぼやっとしていた。この道路舗装の作業に参加して、お年寄りや地元の人とお話することでだんだんと顔見知りになっていくんだと感じた。ほぼ聞かれるのが、「どこ出身?」「なんでこんなところに来たの?」。これだけで盛り上がる。

 自分たちで道路を作るのも農作業のひとつで、実際に完成させるのだから凄い。それが農村社会では当たり前なんだろう。畑のなかの道は私道というのもあるが。

 

重機で砂利と土をならして、生コンを流し込む下地を作っている。自由自在に操る運転に見とれた。

 

枠づくり。コンクリートを流し込む道の両脇に隙間なく設置した。

 

荷台から勢いよく流れ込む生コン。スコップで広げてならし、そのあとはヘラで伸ばしていく。

 

建設会社の社員が黙々と慣れた手つきでならしていく。自分は真ん中でなく外側を担当した。

 

完成。晴天が続けば水分が抜けて3日後には完全に固まる予定。※後日、この付近を車で通ったが無事にコンクリート道路になったかは未確認。

 

春の野草、カンゾウ(甘草)。「食べてみるとねばねばしていて、おひたしに合いますよ。除草剤を撒く前の時期だから生えているんです」(野草に詳しい先輩Yさん談)

 

桃の花芽を取る、取る、取る

 畑での作業は、2日前から桃の花芽を取る作業を1日中、師匠Tさんの奥さんと2人でやっている。桃に限らず、果樹全般に共通にする。これを怠るとよい果実を実らせることができないし、木を殺しかねない。果樹は野菜より派手そうに見えるが、実際は地味な作業を積み重ねていくだけ。野菜でも同じ。

 花芽を取る作業は、芽かきと摘蕾(てきらい)に分けられる。苗木(実を成らせず成長させる木)の花芽を取る時は芽かき、成木(実を成らせる木)の花芽を取る時は摘蕾という。どちらも花芽を取ることに変わりないが、花芽の残し方が異なる。苗木の場合は、葉芽(葉っぱ)は残してあとはすべて取る。情けをかけるとよい木にならない可能性があるからだ。桃色の花が咲き始めてからの芽かきは辛いというのはわかる気がする。いまでも一分咲きの蕾がちらほらあり見とれてしまうから。

 摘蕾は、実を成らせる花芽と葉芽は残す。葉芽は光合成で栄養を取り込むので摘んではならない。この花芽の残し方は、ちゃんと理屈がある。短い枝は先端だけ残してあとはすべて取る。実が重くなると1つが限界。長い枝は、先端と元はすべて取る。次に残った花芽のうち、葉芽の下にある花芽は残す。雨に弱いので葉を傘代わりにするというのがミソ。全てでなく中指の間隔は空ける(実がぶつからないため)。太い枝は、短い枝と同じ。成らしても実に軸がないため枝に食い込み、自然落下してしまうから。そうすると無数の花芽がついているのに、残すのは僅かとなる。この説明を読んでも実際に作業をして五感で覚えないと、正確にてきぱきとできない。あらゆる農作業は、体で覚えたことを文章化(マニュアル化)しないと身につかない。

 なぜ、この作業をするのか。苗木は「小学生に子どもを産ませるようなもの」で、大きな負担をかけて成長を阻害するからだ。だいたい4年から5年で初めて実を成らせる。成木は、数を絞りよい実を成らせるため。この工程はすべて手作業で、植えてある木すべてに行う。気が遠くなる話だが、銭を稼ぐにはコツコツとやるしかない。桃は、この芽かき・摘蕾の作業が山場で、これを終えれば収穫まで2人で作業ができるという。

 

枝に蕾がたくさんついている。これを1本、1本見ながら取っていく。高いところはもちろん脚立を使う。

 

短い枝なので先端の花芽(葉芽の下)だけ残す。

 

成木だとこの大きさに。本数はわからないが、広さは80a。

春の焚き火

 研修初日は、桃とりんごの老木を切り倒して焼却した。病害虫の発生を抑えるには焼却が一番よい。この日は、師匠Tさんと一緒に働いている野菜農家のSさんと仕事をした。細かい枝を同じ向きに揃えて、それから重しとして短く切った幹をその上に置く。ただそれだけだが、枝の切り方や鋸の使い方は正しい方法でやればそれほど力はいらなし、手間もかからない。我流だとただ疲れるだけで効率は悪い。

 チェーンソーの作業はSさんがすべて担当したが、オイルの入れ方は教わった。給油口が2つあり、異なるオイルを給油する。後ろのエンジン部分は、混合油。前は、チェーンオイルで粘性が高い。これを間違えるとお釈迦になる。農業機械は、それぞれに燃料が違うので細心の注意を払わなければならない。混合油は自分で配合して、チェーンオイルは市販品を買っている。2本切ったら、半分程度になるので小屋に戻って前後同時につぎ足す。これ、教わらないとわかりませんよ。

 木を切り倒したら焚き火用にある程度短く切り、トラクターにつなげた荷台に乗せ、焼き場(畑のなか)まで持っていく。トラクターといえば、マルチャーやロータリーしか見たことなかったが、荷台もあったのだ。午後にこれを運転したが、ブレーキはクラッチを切らなければ働かないことがわかった。荷台に剪定枝を積んだままバックしたが、すぐにハンドルをとられて慌ててストップ。前進はつつがなくいった。車の運転は下手くそだが、「合格!」とSさんに言われてホッとした。ちなみに、荷台をつけたまま後進するのはSさんもできないそう。それと危ないと思ったらエンジンを切る。これはとても大事なこと。

 軽トラでなくトラクターの荷台に乗って移動。3速はめちゃくちゃ速く、おまけに揺れるので怖かった。

 半日あればほとんど灰になってしまうほど、火力が強い。木を足していくとどんどん燃えていく。これを囲んでランチと洒落こみたいが、風が吹くと灰が飛び熱風が体を焦がすので、風が吹かない穏やかな日を選んでやりたい。午後はほぼ毎日風が吹くので、早めのランチしかないか。

 灰になる直前の木が一番火力が強い。炭でも同じ。それをここでは、“おき”という。

「おきがたくさんあるうちに、たくさん木もってこい」

「おき少ねぇな」

 この灰は、山菜のわらびのあく抜きとして重宝され、昔は袋に詰めて販売していた。しかし、福島原発事故後は、放射能物質が検出されて出荷は取りやめている。

 研修初日は、焚き火で終わった。